ALS患者

ALS患者

以前、循環器科に勤めていた時のことです。私の病院は地方のそれなりの大きい病院だったため、色々な症例の方が入院してきます。その方は息苦しさを主訴に救急外来に来られ、検査していると体の中の酸素があまりに少なく、すぐに挿管となり緊急入院。

その後ALSと診断された方だったのですが、神経内科のないうちの病院では循環器科に入院されいました。
普通、ALSは手足の筋肉から先に症状が出て、最後の方に呼吸筋の異常が出て来るのですが、その方は珍しく呼吸筋からの症状が出ていました。

挿管していても、意識もあり、手足も動き、ベッドで寝ている状態。
何度か呼吸器の離脱を試みましたが、出来ませんでした。

意識のある方だったので、筆談などでお話しをさせてもらい、仲良くさせてもらっていました。
ご家族への病状説明にも同席させていただき、今後の相談をし、気管切開を行い家で面倒を見るのか、専門の病院へ転院するのかなどを決めてゆきました。

旦那さんは転院できる病院は遠くにあり通いにくいという理由もあり家での介護を望みましたが、その他のご家族は介護の負担を考慮され転院を決めました。

そして、気管切開の手術の日程も決まり、準備は進み・・・・。
手術前日、私は準夜勤でした。

患者さんはいつもと変わらないように見えました。
今思えば、少し痰を吸引してくれという訴えは多かったようにも思います。

今も忘れられない、勤務の時間帯が終わりかけの23時47分。
呼吸器のアラームが鳴りました。
その方の部屋の近くに居た他の看護師が様子を見に行きます。
悲鳴近い声が聞こえました。

走って見に行くと、患者さんが挿管チューブを自分で抜いてしまっていたのです!

自分で息が出来ない患者さんは、みるみる間に唇が青くなっていきます。
とにかくアンビューバックで酸素を送る。
緊急コールをして医師を呼ぶ。
再挿管の準備などしている間にも、測定している患者さんの酸素飽和度は下がっていきました。

90から80、70、50%代まで・・・・。
医師の到着が何分後だったかはわかりません。
とにかく長い時間だったように思います。

無事に患者さんの意識のあるうちに医師が到着し、再挿管が行われ、再び安定した呼吸が行われるようになりました。。。。。

落ち着いてから、どうしてチューブを抜いてしまったのか聞いてみましたが「喉がおかしかったから。ごめんね。もうしない。」とその言葉だけでした。

その後、その方には意識があり問題なくコミュニケーションも取れるけれど、転院するまで上肢の抑制がされるようになりました。

無事に転院されていったけれど、私の中にはある思いが残ります。

どうしてもっと彼女の思いを聞かなかったのだろう。

今まで普通に暮らしてきて、呼吸が苦しいとなって病院に来たら、病院のベッドに機械と共に置かれ、今後、家に帰ることも出来ない。
数週間の間、目まぐるしく変わっていく環境と、自分の体について、彼女はベッドの上でどのように感じていたのだろう。
あまりにひょうひょうと、変わらなく過ごしているから、手術の前日に自分で死のうとするまで、誰も彼女の気持ちを見ようとしていなかったんだと思う。
ALSという見慣れない病気のせいもあったかもしれないけれど、私は症状ばかり見て、難病患者の行く先ばかり見て、彼女のことを見ていなかったのだなぁと思うと、看護師の仕事とはいったい何なのだろうと、とても悲しく、自分が情けなく、この仕事を辞めたいとそう思った。
そして、このことだけではないけれど、今は休業中です。

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